学習・習慣
読み直すより、思い出して間を空けるほうが覚えられる?
検索練習・間隔反復Testing effect / Distributed practice
読み直す代わりに本を閉じて思い出す練習をし、復習を日を空けて繰り返す学び方。
30秒でわかる
何に使うか
資格試験や語学など、数日から先まで覚えておきたい内容を学ぶときに使う。
根拠はあるか
強い(条件つき)。実験室研究が多数あり、メタ分析や総覧でも支持されているが、5分後のような直前のテストでは読み直しが勝ち、授業では効果が出ない科目もある。
どう使うか
読んだら閉じて、覚えていることを思い出す。復習は一度にまとめずに日を空け、いつまで覚えていたいかに合わせて間隔を変える。
手順と記入例は準備中です。上の「どう使うか」と、「要点」をご覧ください。
評価: 強(ただし条件つき)
- 理由: 実験室研究が多数あり、メタ分析・総覧で支持されている。Dunlosky ら(2013)は10技法のうち2つだけを最高評価とした(APS プレスリリースで確認)。1
- Cepeda ら(2006): 839評価/317実験/184論文(言語再生課題が中心。題名どおり verbal recall tasks)。2
- Rowland (2014) Psychological Bulletin, 140(6), 1432-1463。テスト vs 再学習のメタ分析。要旨で確認できたのは「想起(再生)テストは再認テストより効果が大きい」「努力を要する処理が効果に寄与する」こと。効果量の数値(g=0.5前後と流布している値)は二次情報のみで未確認。3
- Adesope ら(2017) Review of Educational Research, 87(3), 659-701。練習テストは再学習やその他の比較条件より学習に有益。効果量は練習テストの特徴などで変わる(要旨)。対象研究の件数は資料により118/217と食い違い、未確認。4
- Karpicke & Blunt (2011) Science, 331, 772-775: 概念マップを作る精緻化学習より、検索練習のほうが、推論を要する問題でも成績が良かった(要旨)。5
- 限界・批判:
- 5分後のような短い保持間隔では再学習が勝つ(Roediger & Karpicke 2006 要旨)。「いつでも効く」わけではない。6
- Dunlosky ら(2013)の著者自身が、これらは万能薬ではなく、動機があり実行できる学習者に効くものだと述べている(APS プレスリリース)。教室での効果は「と考える」という推測的な書き方。1
- 授業現場では結果がばらつく例がある: Bego ら(2024, Int. J. STEM Education, 11) は9つの入門STEM科目で間隔を空けた検索練習を調べ、期末テストで有意な利益が出たのは2科目のみ、メタ分析の全体効果も微積分を含めたときだけ有意。著者は一般化可能性は不明だと結論(DOAJ 掲載の要旨で確認)。7
- 複雑な教材での境界条件や、オンライン実験での効果の出にくさを論じる報告もあるが、査読前・学会要旨レベルのものが多く、ここでは根拠として扱わない。
うまくいかなかった例と批判
① 組織自身が使ったと公表した例(数えるのはここだけ)
- Duolingo(語学学習サービス)【自社サービスの仕組みの説明(販売元の自己申告)。継続率は学習効果の証拠ではない】
- 誰が/いつ: Duolingo の Burr Settles 氏。公式ブログ 2016年12月14日付。
- 資料: 8 (公式ブログ)。同モデルの論文: Settles & Meeder (2016) ACL, DOI 10.18653/v1/P16-1174(検索結果で書誌を確認、本文は未開封)。
- 何に使い: 単語ごとの記憶の「半減期」を予測する半減期回帰(HLR)で、復習タイミングを決める(間隔反復の考え方)。2012年のサービス開始時のライトナー式から置き換えた、と同ブログは説明。
- 結果(同ブログのとおり): 予測誤差はライトナー式のほぼ半分。A/Bテストで1日あたり継続率が、練習セッションで9.5%、レッスンで1.7%、全体で12%向上。これは学習成果ではなく利用継続の指標である点に注意。
- Anki(フラッシュカードソフト)【開発元による製品の仕組みの説明(販売元の自己申告)。効果の証拠ではない】
- 誰が/いつ: Anki 開発元。公式FAQ(最新版を2026-10-18に確認)。
- 資料: 9
- 何に使い: カードの復習間隔を決める。SM-2をベースにした方式と FSRS の2つを持つと説明。SM-2との違い(初期の学習ステップを自由に設定できる等)を明記。
- 結果: 学習効果を示す数値は公式FAQにはない(使用方式の説明のみ)。
② 研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例
※実施=効果の証明ではない。
- 横浜国立大学 国際戦略推進機構 吉良アマンダ氏の授業実践報告
- いつ/どの資料: 「英単語学習への間隔反復法導入に向けた教育学的戦略」『ときわの杜論叢』第6巻(2019年3月)、実践・調査報告。10 (書誌と要旨は検索結果で確認。PDF本文は取得できず未開封)。
- 何に使い: 大学の自立英語コースの3クラスで、6週間、間隔反復法で英単語を学習。
- 結果(要旨のとおり): 学生の回答は方法への態度・自己評価ともおおむね肯定的。否定的な回答からは、技術的な問題、動機づけ、読解・リスニングへの効果への懸念が挙がった。成績向上の数値は未確認。
- Bego ら(複数科目の大学授業での実施)
- いつ/どの資料: Int. J. STEM Education 11 (2024), DOI 10.1186/s40594-024-00468-5。研究者が自らの9つの入門STEM科目で、間隔を空けた小テスト(検索練習)を取り入れて検証。
- 結果: 次章「失敗・批判」を参照(効果が出た科目は一部)。事例としては導入の公表であると同時に、限定的な成果の公表でもある。
③ 近縁実践・参考例(原典との対応未確認)
- なし(確認できた範囲で)。
④ 手引き・解説(使用実績ではない)
- なし(確認できた範囲で)。
まとめ: 組織自身が使ったと公表した例は2件(Duolingo、Anki)。どちらも自社製品の仕組みの説明(販売元の自己申告)で、効果の証拠にはしない。横浜国立大学の授業実践報告と Bego らの授業での検証は、研究として公表された実施例で②に置いた。
- 原典(論文): Roediger & Karpicke (2006) と Cepeda ら(2006)、Dunlosky ら(2013)。いずれも上記DOIから入手できる(本文の公開状況は未確認)。
- 邦訳書: ピーター・C・ブラウン、ヘンリー・L・ローディガー3世、マーク・A・マクダニエル『使える脳の鍛え方 成功する学習の科学』依田卓巳訳、NTT出版、2016年4月刊(国立国会図書館サーチで確認、ISBN 978-4-7571-6066-8)。原書は Make It Stick(Harvard University Press の Belknap Press、2014年)。ローディガーは上記2006年論文の著者本人。
- 日本語で読める本は、上記1冊のみ確認。ほかは未確認。
原典で確かめたこと
検索練習(テスト効果)
- 論文: Roediger, H. L. & Karpicke, J. D. (2006) "Test-enhanced learning: Taking memory tests improves long-term retention." Psychological Science, 17(3), 249-255. DOI 10.1111/j.1467-9280.2006.01693.x(PubMed 16507066 で確認)。6
- 主張(要旨より): 学生が文章を学習したあと、「再学習(読み直し)」と「自由再生テスト(フィードバックなし)」を比べた。最終テストを5分後に行うと再学習のほうが成績が良い。しかし2日後・1週間後のテストでは、先にテストを受けた群のほうがはっきり成績が良かった。再学習した群のほうが「覚えている」という自信は高かった。テストは評価だけでなく学習そのものを強める、というのが結論。6
- 「テスト効果」という現象自体は2006年より前から知られていた旨が要旨冒頭にある(a phenomenon known as the testing effect)。2006年は「教育的に現実的な文章で、再学習との公平な比較をした」研究と位置づけるのが正確。6
- 数値(1週間後の想起率など)は本文を読めておらず未確認。
間隔反復(分散学習)
- Ebbinghaus, H. (1885) "Über das Gedächtnis"(ライプツィヒ)。1913年の英訳 Ruger & Bussenius "Memory: A Contribution to Experimental Psychology"(Teachers College, Columbia University)が archive.org / psychclassics に存在することを検索結果で確認(英訳全文は開いていない。本文の記述内容は未確認)。11
- 現代の定量的な統合: Cepeda, N. J., Pashler, H., Vul, E., Wixted, J. T. & Rohrer, D. (2006) "Distributed practice in verbal recall tasks: A review and quantitative synthesis." Psychological Bulletin, 132(3), 354-380. DOI 10.1037/0033-2909.132.3.354(PubMed 16719566 で要旨を確認)。2
- 主張(要旨より): 184本の論文・317実験・839の評価を統合。学習の間隔(ISI)と「最終テストまでの期間」は組み合わさって効き、最適な間隔は最終テストが遠いほど長くなる。2
- SM-2(SuperMemo)・Leitner システムの年代は、今回ソースで確認できず未確認。Anki 公式FAQで「Anki は SM-2 ベースのアルゴリズムと FSRS の2つを持つ(23.10以降)」ことのみ確認した。9
総覧
出典
- www.psychologicalscience.org/news/releases/which-study-strategies-make-t ↩
- pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16719566/ ↩
- pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25150680/ ↩
- doi.org/10.3102/0034654316689306 ↩
- pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21252317/ ↩
- pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16507066/ ↩
- doi.org/10.1186/s40594-024-00468-5 ↩
- blog.duolingo.com/how-we-learn-how-you-learn ↩
- docs.ankiweb.net/faqs/what-spaced-repetition-algorithm ↩
- ynu.repo.nii.ac.jp/records/10042 ↩
- archive.org/stream/memorycontributi00ebbiuoft/memorycontributi00ebbiuoft ↩
- pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26173288/ ↩
各ページは確認日の時点で開けた資料にもとづきます。根拠の強さの決め方