問題解決・思考
MECEに分けると、考えの抜けは減らせる?
ロジックツリー・MECELogic Tree / MECE
同じ切り口で分け、重なりと抜けを点検しながら木の形に整理する実務の技法。
30秒でわかる
何に使うか
原因を調べるときや解決策を考えるときに、見落としや重なりを減らしながら問いを小さく分けるのに使う。
根拠はあるか
弱い。実務の標準技法として広く使われているが、効果を直接確かめた研究は今回確認できた範囲では見つからない。
どう使うか
解きたい問いを1文で書いて見直し、1つの切り口で2〜4つに分けてダブりとモレがないかを確かめる。大きい枝だけをさらに分け、いちばん下に数字か確かめ方を書いて次の行動を1つ決める。
手順
- 解きたい問いを1文で書き、本当にその問いでよいかを一度見直す(ここがずれると、あとの分解が全部むだになる)。
- その問いを1つの切り口で2〜4つに分け、「重なりがない(ダブりなし)・全部そろっている(モレなし)」かを確かめる(この状態を MECE〈ミーシー〉と呼ぶ)。
- 大きそうな枝だけを、同じやり方でさらに分ける(全部の枝を深く分けなくてよい)。
- いちばん下の項目に数字か「何で確かめるか」を書き、いちばん効きそうな枝を1つ選んで次の行動を書く。
記入例
架空の場面:入社2年目のDさんの月の残業が、先月より20時間増えた。
- ①問い:最初は「どうすれば早く帰れるか」と書いたが、広すぎるので「増えた20時間は、どの仕事から来ているか」に書き直した。
- ②第1階層(切り口:仕事の種類):会議/資料づくり/メール対応/その他。ダブりの確認で、「会議用の資料づくり」は資料づくりに入れると決めた。モレの確認で、先月の予定表の仕事を1つずつ当てはめ、どこにも入らないものがないかを見た。
- ③さらに分ける:資料づくりが+12時間と一番大きかったので、「新しく作る」と「直し」に分けた。直しが+9時間だった。
- ④数字と行動:直しは1つの資料につき平均3回。「作り始める前に、上司と5分だけ中身の順番を確認する」を来週から試すと決めた。
できたかの目安
- いちばん下の項目に数字か確かめ方が付き、「次に何をするか」が1つ決まっていれば使えている。きれいな木が描けただけで行動が決まっていなければ未完成。
なぜ効くか(短く)
大きな問いをそのまま考えると、目立つ原因に飛びついたり、見落としが出たりしがちです。先に分け方を決めて木の形にすると、どこに抜けや重なりがあるかが目に見えやすくなります。ただしこれは実務の経験則で、効果を直接確かめた研究は今回見つかっておらず、完璧な MECE を目指すと手が止まる、という批判もあります。英国政府の研修資料も、最初の問いを間違えると「間違った木に向かって吠える」ことになると注意しています1。
弱(経験則・実務の標準技法)。
- 今回の調査で、ロジックツリー/MECE の効果を直接検証した実証研究は確認できなかった(見つからなかったのであって、存在しないとまでは言えない)。
- 批判として確認できたもの(Wikipedia の MECE 項の要約。個別原典は未開封): 網羅性は実務では完全にならず余計な項目を排除できない/答えまで ME に縛ると不必要に窮屈/冗長性が必要な場面もある。2
- 起源も一枚岩ではない: 本人が「考案」と「アリストテレス由来」を併記している。「ミントが1960年代に発明した」と断定する書き方は避ける。3
うまくいかなかった例と批判
① 組織自身が使ったと公表した例(数えるのはここだけ)
- Barbara Minto 本人/McKinsey(1963–73、以後は自身の研修): 在籍中にピラミッド型の文書指導を社内講座化し、退職後も教え続けたと本人が語る。MECE を「重ならず漏れない」グルーピングの原則として使用。出典: 3 (成果の数値は記載なし)
- 日本の組織の公的文書での使用例は今回の調査で見つからず。
② 研究・評価として公表された試行/研究報告における実施例
- なし(確認できた範囲で)。
③ 近縁実践・参考例(原典との対応未確認)
- なし(確認できた範囲で)。
④ 手引き・解説(使用実績ではない)
- 英国政府(GOV.UK 公開の研修資料「Implementation Insights: Using Issues Trees」): 政策目標を答えられる小さな問いへ分解する手順として issue tree を使い、規則2として「MECE にする」を明示。例題は架空の「魔法省」で、実績データはない。作成年はPDFメタデータ上2015年5月(発行部署は本文に明記なし)。出典: 4、使用実績の公表ではないため④に置いた】
- 齋藤嘉則(元McKinsey、ビジネスコラボレーション代表)『問題解決プロフェッショナル 思考と技術』新版(ダイヤモンド社、2010年4月): 自身の問題解決研修の内容として、技術編に MECE とロジックツリーを章立てし、原因分析・解決策立案に使うと説明。出版社公式ページの目次・著者略歴による。出典: 5 (使用の成果は記載なし)【著者の書籍(研修内容の解説)で、組織の使用実績ではないため④に置いた】
- ミント『考える技術・書く技術』日本語版(山崎康司訳、ダイヤモンド社、初版1995年4月): 紹介文で McKinsey など主要コンサル会社や複数の大企業でライティング研修を担当してきた旨が書かれている(出版社側の紹介)。出典: 6、使用実績の公表ではないため④に置いた】
まとめ: 組織自身が使ったと公表した例は1件(McKinsey の卒業生向けサイトでの Minto 本人の回想)。英国政府の研修資料、齋藤氏の書籍、ミント日本語版の紹介文は④(手引き・解説)。
- バーバラ・ミント(山崎康司訳)『考える技術・書く技術 説得力を高めるピラミッド原則』ダイヤモンド社、1995年4月、ISBN 978-4-478-49019-8(版元ドットコムで実在確認。現在入手可否は未確認)。第2部「考える技術」に問題解決のプロセスあり。
- 齋藤嘉則『新版 問題解決プロフェッショナル 思考と技術』ダイヤモンド社、2010年、ISBN 978-4-478-00553-8(出版社公式ページで確認)。MECE とロジックツリーの実践入門。
- 原書: Barbara Minto, *The Minto Pyramid Principle*(1996、書誌は上記記事で確認、書籍は未開封)。
原典で確かめたこと
- MECE の提唱者(本人の主張): Barbara Minto。McKinsey Alumni の本人インタビュー(記事の公開日は本文に記載なし)で、自分が MECE を考案した、ただし「元はアリストテレス」と述べている(確認済み)。同記事は、彼女の McKinsey 在籍を 1963–1973 年(クリーブランド、1966年からロンドン)とし、その間に文書をピラミッド状に整理し直す習慣に気づいて社内講座にしたと説明する。MECE という語の考案年はこの記事に書かれていない。3
- 原典書籍: Minto『The Pyramid Principle: Logic in Writing and Thinking』は1985年刊(Pearson版1987年)、改訂版『The Minto Pyramid Principle: Logic in Writing, Thinking and Problem Solving』は1996年(上記インタビュー記事の記載。書籍そのものは未開封=原典本文は未確認。DOIなし)。3
- 主張(インタビューと書誌紹介からの理解。原典本文ではない): 考えの束は、上位の主張を下位がまとめて支えるピラミッド型に並べると読み手が理解しやすい。同じ階層のグループは「重ならず(ME)・漏れなく(CE)」分ける必要がある。3
- ロジックツリー: 特定の提唱者・原典は確認できず(未確認)。MECE な分解を木にしたもの。英国政府資料は「issue tree」と呼ぶ。1
- 補足(Wikipedia 経由で未確認): S. R. Ranganathan『Prolegomena to Library Classification』(1937) に「網羅」「排他」の類似規範があるとの記述あり。原典は開いていない。2
出典
- assets.publishing.service.gov.uk/media/5a816cd1e5274a2e8ab53eb1/Issue_Tr ↩
- en.wikipedia.org/wiki/MECE_principle ↩
- karriere.mckinsey.de/alumni/news-and-events/global-news/alumni-news/barb ↩
- assets.publishing.service.gov.uk/media/5a816cd1e5274a2e8ab53eb1/Issue_Tr ↩
- www.diamond.co.jp/book/9784478005538.html ↩
- www.hanmoto.com/bd/isbn/9784478490198【出版社側の紹介文で ↩
各ページは確認日の時点で開けた資料にもとづきます。根拠の強さの決め方